※ 死体画像が掲載されています。
見たくない方はここで戻ってください。


































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平成22年夏の正午過ぎ頃。

近々遠方から来る仲間への情報提供の為マークしていた未調査の廃墟に訪れた。
朝は用事があった為地元を10時過ぎに出るという廃墟に行くにしてはかなり遅い出発だった。
5件ほど巡る事にしていたが当りが出るか外れが出るか運試しの一日になるのだが
結論から言うと一発目以外は外れだった。



そしてその一発目の開いた窓から入った矢先に死体が飛び込んできた。
この状況は発見に至るまでの前振りは何も無い突然のことだった。
外からはたしかに死角になっているが開いた窓からは外へも死臭が強烈に漂っていた。
だから仮に同じ趣味の人間が訪れたとしてもその臭いを嗅げばその時点で引き返すのが普通だろう。
ただ自分は悪臭に対する抵抗力があるのか、蝙蝠の糞のような臭いがするなと最初は思ったのだった。
そしてややカジュアルにも見える服を着たそれが仰向けになって倒れてるのを見て最初は人形かと思った。
あまりにも非日常的でそうですねとは受け入れられない。
しかしやはり臭いしどう見てもリアルで間違いのない事が分かった。
死体がとんでもなく臭いという話は聞いた事あったがもっと臭いものだとも思っていた。
そしてしばらく考えたが、写真に撮り、その後廃墟探索をする事にした。
おそらく大体の人間は反射的に警察へと通報するだろう。
分かっていたが、この時に選んだ行動だった。



場所や建物についての詳細は記載しないがそこはホテルで数室の客室があった。
この建物、昭和50年代に建てられて外観には目立つ意匠は無くとても安っぽい。
それでも期待を捨てなかったのは今までの廃墟活動から外観からだけで判断したら
裏切られる事がある事も分かっていたからだった。
実際に客室の間取りはさほど各部屋に違いはなかったが
内装のシャンデリアや上質なクロスにコストがかかっており、派手な色使いにも工夫が感じられた。
廊下にはゴミが散乱していたが目立った破壊行為は見当たらなかった。
1カ所に集まった汚い色に変色した使用済みのコンドームや
水に流されずに無造作に床に捨てられたトイレットペーパーや誰かが寝床にしていたような形跡もあった。
それらが直観的に死体になったその人の生活痕ではないかと思った。
どの部屋も窓は閉め切られていたしこの夏の異常気象のせいもあり相当に暑いはずだった。
汗のせいとも思えないが手のひらにぬるぬるとする嫌な感覚があって洗いたかったのを覚えている。



一通りの探索を終え、同じ道を戻り同じように死体の横を通り入ってきた所から出て行った。



さて、この事について自分の中だけに閉じ込めておく事はできない。
人はきっとその時の感情のバロメーターが高いほど誰かに話したくて仕方ない。
当然だが今回の場合は大切な人に伝えたい内容の話では無く
あまりにもヘビーな事だけに心配せずに聞いてもらえる人に話したかった。
先ずは友人だけが公開範囲の日記にその時の事を簡潔に書いた。
携帯からでもあるし写真は載せず、場所などの情報も一切書かなかった。
死体を目撃した事、死体が臭かったが想像していたほどではなかった事。
写真に撮って、その後その廃墟を探索した事。
そして警察に連絡するべきか、このまま誰かが見つけるまでそのままにしておくか
について友人の意見を聞こうと思った。

日記は平日の昼間にもかかわらずコメントがのびた。
早く通報しろと言う者、匿名で通報をすすめる者、家に持って帰るしかないという者。
意外と人一倍びびりの友人に限ってこの状況を楽しんでいた。
しばらくすると携帯番号やメールアドレスを知っている友人からは直接連絡が入った。
心配してくれている連絡もあれば好奇心を掻きたてられているのも伝わってきた。
ただ先ずは自分自身の保身を考えろという内容の話はあまり聞きたくなかった。
当然その点は考えていたがとことん調べても殺人は犯していないのは明らかだからだ。
最悪の場合を想定しても保身について過度に考える事は違うと思っていた。

自分から相談の電話をしたのは原付モンキーという友人だけだった。
実は死体を発見したがお前ならどうすると聞いたところ、ほっとくと即答。
その意見はマイノリティだったが自分も当初その考えだった。
彼の考えでは無関係の死人の為に連絡する義理は無いとでも言いたそうだった。
自分自身はその人の為にどうするべきかを考えたが死人が口を開くはずもなく
素人に推理できない現場の状況はどうするべきか分からなかった。

警察に通報する、というのは9割以上の発見者がする状況反射的な行為で
死人や遺族が望んでいると分からないなら何の為に通報する必要があるのだろう。
そしてこのようなケースで通報するほとんどの理由は結局は怖いからなのだ。
警察を頼りに任せて自分が抱えた重い状況をリセットする為にしているのだと思った。

ひそひそ話が好きな友人や取調室でかつ丼食べたかとネタにする友人
同じ廃墟趣味を持つものとして遭遇した事態に心から心配してくれた友人もいたが
意見としては放置しようが通報しようが面倒になるが通報するべきというものが多数だった。
そして皆の意見は俺にとって暖かく感じられたし、実際に聞いて良かったと思う。

一時不謹慎だが死体本人は他の人でなく自分に見つけてもらいたくてそこにいたとするなら
ブラック過ぎるがジョークが好きな人ではないだろうかとも思っていた。
死体に出遭うという機会に自分を選んだのなら何らかの理由がある気がしていた。

現場の状況については自殺なのか他殺なのかそれすら判断できていなかった。
腐乱してしまった死体から推定で年齢を判断し、服装も普段着だった事もあり老衰死ではないと判断した。
一つだけ開いたその窓がもしかすると本人がその後早く見つけてもらいたくて
開けた行為にも思えるし、誰かが開けたとするなら事件性も考えられた。
若しくは誰かが空家になったそこへ窃盗に侵入し、自殺死体と鉢合わせして通報せずに至ったとか。

この日現場の状況について自分の頭で考えられる事はこのくらいの事だった。
そもそも現場を検証するのはプロで、当初から決断を迫られるべきは
警察の聴取を受けるかそれとも通報だけするか放置しておくかの三択だった。
そして久しぶりに「悩んだ」選択であったが通報だけする事を選んだ。
その時点でこの時に抱えていたわだかまりは解消できた。
次の日ではなくこの日に決断した事も理由があった。
それはこの日のうちなら通報した事が確認できる事だった。

連絡が届いているかを確認しに、その後数時間かけて再度現場へと向かった。
離れた所からでもパトランプで確認しようと思ったのだが点いておらず
現場のある建物の沿道まで近寄ってみた。
そして4,5台のパトカーと警官が10人くらいは目視できた。
彼らはおそらく何時間という長い間暗くて臭いがここに足止めされるのだろう。



心配している友人へ連絡し、重たく長い一日が終わった。
帰ったら、あの残像が夢に出ないようエロ番組をつけっ放しにして寝た。
ただショックな出来事だったが、自分にとっては一回り据わる経験になった。
それは人間はいつか死ぬ事、死んでそのままにしておけば腐る事。
それを間近に見た事で死も生きてるうちにおこる当然の一部として受け入れた気がした。
つまり得体の知れない恐怖が得体の知れないものでしかないと思えた。
とはいえ同じ事にまた遭遇すれば重い気分にもなるし慣れるものではないだろう。



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