森の遊園地




Tは、アラフォーで独身、一日中インターネットと廃墟のことばかり考えている。
最近はネット上の仲間になったP子の事が気になっている。


P子はアグレッシブに廃墟を攻め、その探索記事をブログにアップしており、そのコメント欄でお互いは知り合った。
TとP子は話の流れでいつかご一緒できたらいいですねとも言っていたが、
Tは年の離れた子に相手にされるほどのスペックは己に無いことを知っており
ネット上の居心地のいい関係を崩すことになるだけだと躊躇していた。

ある日Tは、T自身がずっと探していて、しかもP子が好きな廃墟を見付けた。
そこは廃墟界でも、ごく一部のマニアの間で秘密の場所とされている緑に覆われ、錆が蔓延る、森の遊園地だった。

そういえば、あの子ここに憧れていたっけ・・
気に入ってる子と情報を共有したい気持ちと相手を幻滅させたくない気持ちの葛藤のうえ連絡をとる事にした。
迷ったら茨の道の方を選ぶ、それもTのポリシーだった。
モサいおっさんが、憧れの子を連れて合同探索することを決心したのだ。

冬の早朝4時に最寄りの道の駅で二人は初めて顔を合わす。
なぜひと気の無い場所の薄暗い時間に、年の離れた男女が待ち合わせすることになるのか。
これが廃墟だから巡り合わせた縁だ。















和気あいあいとした雰囲気で園内をまわる二人。
Tは分かりやすい奴で、ブサイクと同伴だと顔が曇るが、P子が愛らしく、Tの顔も自然とほころんだ。

P子はP子で、モサいおっさんだとしても、決して冷たくあしらわず
目上の人を敬う品性を持ち合わせていたようだ。







































































たしかに素敵な場所であった。
そしてTの頭の中は大半がP子のことを考えていた。

少し距離を置いて、廃墟の方に夢中なふりをして、警戒心を解こう。
たまに危険な所ではそれとなく腕を支えて、互いの距離を縮めよう。

出会った時から考えていたこと、きっともう会えなくなること。
この幸せな一日より、長くてツラい日が続く。



大好きなことをしていれば、会ってみたい人や行ってみたい場所が必ずある。
だから目的はこれで十分に達成している。
自分の好きな人に会えて、行ってみたかった場所に行っている。







その場所はたしかに機能を失い、棄てられていた。
しかしTには幸せの意味を教えられる場所だった。




(平成28年1月撮)
(平成28年6月記)


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