ミニバラ医院


ここは広島県内の廃医院探しで、最初に見つけた廃医院だった。
自宅利用されてたり転用されてる物件の繰り返しだったので
「あっ、本物だ。」が訪れた時の率直な感想だったし
まだこんなのがあるんだという衝撃は大きかった。

時には週に一日の休みを図書館にこもって資料に向き合い、何十件という時間や距離を費やす。
それは良い面だけいうなら未出の近代建築を見る機会もあり、広島県内の地図や歴史の変遷を学ぶ事もできて
調査そのものがエキサイティングであった。


カメラを取り出したい衝動を抑え、とにかく落ち着いて目の前の光景を一通り目にした。



間取は四角形の建物の真ん中に廊下が通り、手前左から薬室、診察室、準備室、手術室
手前右から待合室、処置室、検査室、レントゲン室とバリエーションに富んでいる。
こうして撮った写真を見てみると物置状態で散らかっているがこの時は気にならなかった。
しかし動きづらかったのは間違いない。



診察室。
カレンダーは1977年で止まっている。
色褪せて年季の入った壁、古い棚や額に入った絵に囲まれて
ここに身を置くと見たことないはずなのにどこか懐かしい気持ちにさせる。
なのでこの診察室がこの医院の各室の中で一番落ち着く。
他は暗かったり、床が踏み抜きそうで安定しない事もあり。



薬室。棚には瓶や缶が多数並べられていた。



窓辺にある薬の調剤器具。
何十年と変わらずそこにある事に魅了される。



普通薬のラベル・・これはS診療所の薬棚やその他の有名廃医院にも貼ってある。
このラベルを見つけたら、廃医院ブランドロゴだと勝手に思う事にしている。



廊下の突当り、人目に付きやすい所には裸婦画が飾られている。
間違ったセンスしてないかと思いつつ、よく残っていたなと思う。
いつもなら自分を待っていてくれた、と運命の巡り合せと勘違いするところだ。
だが、実際は招かれたのではなく、自ら赴いたのだ。



処置室。
これは当て字だろうか、昔の漢字は難しい。



床が傾いていて踏み入れない。
人の出入りは無いまま時間だけが経過している。



手術室は足の踏み場もないほど荷物でごった返していた。
この医院は手術室を完備している事から考えると外科としても診療していたようだ。
きっと昔の田舎町を想像すると何でも診てくれるお医者さんだったのだろう。



手術台と思ったが、これは足支えの器具刺したら分娩台にはならないだろうか?
昔の手術室は床が汚れても洗い流したりしやすいから土間になっている。



レントゲン室。
点検表を見たところ昭和16年据付と記してあり相当に古いレントゲン機器と思われる。



木製の容器?はなかなか無いのでは。



待合室には山之内薬品商会(昭和15年に山之内製薬に社名変更)の
主力商品カンポリジン・タカローゼの触込みが入った鏡がかけてあった。



待合室にタカローゼと、長い間。



ここを離れた直後、凄いものを見つけた感動とこれを超える廃医院を見つける事は
今後無いだろうという目的を失ったような複雑な感情が生じた。

しかしどれだけすごい廃墟を鑑賞できるかはいつも考えていたが
もっと大切とも思える身近な歴史に触れる機会の始まりのようだった。

次第に気付かされた事だが今まで人の目に留まる事なく消えていった物件は多い。
例えば郊外では過去を遡れるほどの地図も作られていない。
資料も数十年前であれば記録がアバウトだし残していない事も多い。
そんな中から廃医院に出会ったり、その町の知られざる歴史に触れるのはやはり有意義な事。
ここから身の周りの奥深い社会見学とか歴史散策が始まった。そういう事にしといてくれ。


(平成25年5月訪)
(平成26年7月記)

□□戻る□□




Ads by TOK2